無口な彼の妬かせ方




「あれ?どうしたんですかー」




突然、聞こえたその声。



パッと顔をあげれば、



ニコニコと微笑む唯ちゃんの姿。



全身ビショビショで、髪まで濡れている。




「暇だから……こうやって、遊んでるの」




本当は川に入りたいけれど、



入れないから……




「あっ、そうなんですか?じゃあ……


コテージに帰っても、いいんですよ?」


「!?」




ニコニコと楽しそうに笑いながらそう言った唯ちゃん。



えっ……?



この子、今なんて。



コテージに帰ってもいい?



それって、帰って下さいって言ってるのと同じ……



その笑顔には裏がありそうな予感がして



一瞬ゾクッと背中が冷たくなる。




「あっ!背中に虫ついてますよ!」


「……っえ、ウソッ!!」


「ちょっと待って下さいね。すぐにとりますから………」




そう言って。



唯ちゃんの手が私の背中に伸びて…




「っ!きゃっ……!」




バシャーン、と。



何故か私は川の中に落ちたんだ。



……いや、落とされた…?


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