無口な彼の妬かせ方
「きゃあ!大丈夫ですか~!?」
口元を手で覆い隠して、
ジッと私を見つめる唯ちゃん。
今のって……
わざと、だよね?
トンッと、押された感じがすごくした…
「……………」
ビッショリと濡れた服。
ポタポタと髪の毛から水が滴り落ちるほど濡れている。
ヤバイ、どうしよう。
呆然とする私。
唯ちゃん……
あなたってもしかして…
「藍っ!!」
「っ、」
遠くの方から私の名前を呼ぶ声。
あっ……翔だ。
ふと顔をあげると、驚いた表情でこちらに向かって走ってくる翔。
手元には、何故かボールを持っている。
けれどそれは捨てるかのように、その場に放り投げていた。
「大丈夫かっ!?」
私に近づくと、
すぐに私の腕を掴み強引に引っ張りあげる。
そんなに深くはない為、足はついていた。
「どうしたんだよっ!何があった!?」
「……………」
喋れない。
いや、喋られないの。
脳が混乱して、この状況にまだ理解が出来ていないから……