無口な彼の妬かせ方




「きゃあ!大丈夫ですか~!?」




口元を手で覆い隠して、



ジッと私を見つめる唯ちゃん。



今のって……



わざと、だよね?



トンッと、押された感じがすごくした…




「……………」




ビッショリと濡れた服。



ポタポタと髪の毛から水が滴り落ちるほど濡れている。



ヤバイ、どうしよう。



呆然とする私。



唯ちゃん……



あなたってもしかして…




「藍っ!!」


「っ、」




遠くの方から私の名前を呼ぶ声。



あっ……翔だ。



ふと顔をあげると、驚いた表情でこちらに向かって走ってくる翔。



手元には、何故かボールを持っている。



けれどそれは捨てるかのように、その場に放り投げていた。




「大丈夫かっ!?」




私に近づくと、



すぐに私の腕を掴み強引に引っ張りあげる。



そんなに深くはない為、足はついていた。




「どうしたんだよっ!何があった!?」


「……………」




喋れない。



いや、喋られないの。



脳が混乱して、この状況にまだ理解が出来ていないから……

< 123 / 304 >

この作品をシェア

pagetop