無口な彼の妬かせ方




「で。なんで川に落ちたわけ?」




私の髪の毛を拭く翔の手が止まった。



あっ……、



そうだった。



私、唯ちゃんに押されて……



チラッと唯ちゃんの方に目線を向けて見れば、



眉根を寄せてギロッと怖い目つきの唯ちゃん。



言っても……いいのかな…



私の勘違いだったのかもしれないけど、



確かにポンッて押された感じがした…。



でも、もし。



それを言って、翔が信じてくれなかったらどうする?




「あっ……、と。」




話そうとしたけれど、



一旦キュッと口を噤んだ。



性悪な女だって思われる?



俺の幼馴染を悪い風に言うなよ、



なんて言われるかもしれない。



……ほんと私ってネガティブ思考。



自分自身が傷つくのを恐れてるんだ。




「足が滑ったの!ツルーンって…!」




あははっと無理に笑いに変えようとする私。




「………本当か?」




けれど、



それを怪しげに見る翔。

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