無口な彼の妬かせ方




……けれど。




「大丈夫。呼んだらすぐおりて来るだろうし」




そう言って。



翔は階段のある所に近づいていき、




「おーい、唯!


何してんだよ。夕飯の準備手伝え」




キッチンにいる私達の所まで聞こえるぐらいの大きな声。



やっぱり……翔がそう呼べば、




「ごめんなさい。


ちょっと疲れてたから寝てたの」




唯ちゃんは翔の言うとおりに、おりて来た。




「唯ちゃんってさ。


絶対、翔のこと好きだよね」




ボソリ、と。



私にそう耳打ちする蓮くん。



お互い目線は唯ちゃんに向いていて、




「……………」





私はコクリと頷いた。



ハッと気づいたように私達に目線を向けた唯ちゃんは、




「…っ、」




パッと翔の後ろに隠れていた。




「……どうしたんだろ…?」


「さあ?


なんか、恥ずかしいんじゃないの?」




フフッと笑う蓮くん。



恥ずかしい?のかな……



よく分からないけど。




「……ふーん。」




私と唯ちゃんの関係って。



俗に言う"ライバル"なのか。



キュウッ、と。



翔にしがみつく唯ちゃんを見て、



ちょっとだけムッときたのはそう確信出来た証拠らしい。

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