無口な彼の妬かせ方
だから………
「ごめんね。
誘ってくれてありがとう。
けど…私は、いいや。」
バイト。
それっていい案だと思うけど、
私がバイトを始めれば、翔といる時間が短くなる。
それだけは、
なんだか嫌だな……って。
そんな事を思うぐらい、私は翔に依存しているみたいだ。
初めての彼氏であって。
初めての体験をして。
初めての感情を感じさせられる。
辛いトキもあれば、幸せなトキもあったりと。
めちゃくちゃな人生だけれど、私はその人生が、かなり気に入ってる。
今のこのままが、ずっと続けばいいと思うぐらいに。
「他の子、誘ってあげて。
………じゃあね」
そう言って。
クルリと方向転換をし、屋上を出ようとする。
ガチャリとドアのノブを握った、
その瞬間。
「待てよ。」
ノブを掴む私の手の上から、
蓮くんの手が覆いかぶさるようにして、その手がギュッと包み込まれた。