無口な彼の妬かせ方
やだやだやだ…!
そう頭では分かっているのに、身体はいうことを聞かない。
手さえ離してくれれば、ここから逃げれるのに…
ガッチリと固定されていて、逃げることなんて不可能。
ただもう、なにもせずにされるがままで待つことしか手段がないらしい。
「っ……!!」
目がうるんで視界がボヤける。
助けて!その言葉すら出せない私は、本当に弱い。
「っ」
ギュッ、と口をつぐんだ。
……そのとき。
「あ!藍先輩、いた!!」
とても大きな声で、私の名前を呼ぶ声。
それによって、目の前の男の動きはピタリと止まる。
「もう。今から遊ぶ約束だったはずですよ!忘れてたんですか?」
「ゆ、いちゃん…」
そこにいたのは、なぜか怒っている様子の唯ちゃんで。
遊ぶ約束?そんな約束した覚えがないけど、
唯ちゃんの存在に、目線が唯ちゃんの方を向くその男の力が少し弱くなったのに気づいて。
私は咄嗟にその手を振り払った。