無口な彼の妬かせ方
「あっ!」と悔しそうな声が聞こえるが、ダッシュでその場を離れる。
助けて…くれた?
そう思いながら、唯ちゃんのそばに向かえば、
「…どんくさ」
あきれたかのようにそう呟いて、私の手をとり、走る。
振り向けば、あの男は睨むような鋭い目つきで私達を見ていた。
唯ちゃんが…来てくれてよかった。
もし来てくれなかったら、あのまま私は………
「………っ」
想像すればするほど怖くて、寒気がした。
私達が逃げた先は2年生の校舎で、放課後のため誰もいない。
「……ほんと、どんくさすぎる」
走ったせいか、お互い息が荒れている。
「ご、めん…。あ、じゃなくて…助けてくれてありがとう…」
「後輩に助けられるなんてね」
「……………」
それも、そうだけど…
でも本当に助かった。