無口な彼の妬かせ方
「唯か…」
「まあ…そんな感じ、です。」
はぁ、とため息をつく翔。
やっぱり来るのはまずかった…?
「………とりあえず、帰ろっか」
「あ…えっと………」
チラチラと、そのお店が気になって目線がそっちに向く。
「………あぁ。この店、気になる?」
「き、気になるって言うか…その……」
なんて言えばいいんだろ…
「この店、唯のお父さんが経営してるとこ」
言葉をつまらせていた私に、翔はサラッと言う。
「え!」
こんな可愛いらしいお店を唯ちゃんのお父さんが!?
「……だから、人手が足りないらしくて。俺が手伝いに来てた。」
「そうなんだ…」
だから放課後すぐにいなくなってたんだ。
今ここでその理由が分かった。
「………藍も、バイトしてるし。……暇だなって、思って」
頬を赤く染める翔。
見られたくないのか手で口元を軽く覆い隠す。