無口な彼の妬かせ方
"藍"
そう呼んでも、全く目を覚まさないコイツ。
ピクリと目元が動いた気がしたが、気のせいだったようで。
「悪い……これだけは、許して」
聞こえていないだろうけど、忠告はしておいた。
藍の頬にかかっている髪の毛を耳にかけて、
小さめな声のトーンでそう囁いてから、
この薄く赤い頬に軽くキスをおとす。
口にしてしまえば、多分、それだけで俺の理性は吹っ飛ぶだろうし。
藍を起こしてしまうかもしれないから。
「藍……好きだよ」
無意識にそれは声に出していて、あとあと照れ臭くなる。
何言ってんだよ、俺……はずっ。
手で口元を覆い隠して、眠る藍から目線を外す。
ふと目に入った窓の外の風景。
気づけばもう、夜になっていた。