無口な彼の妬かせ方




………だけど。



その手は翔の手によって掴まれて、パシッと軽い音が鳴った。



翔の髪の毛に触れる直前に。




「へっ?」




なんで……掴まれたの?



意味が分からなくて、ピタリと動きを止めて黙り込む。



目が合えば、翔は私からフイッと目線を逸らし、




「………ワリ」




ただ、その一言。



それと同時に、翔は掴んでいる私の手を離した。



え?



なんか、謝られた?



ポテッと力をなくしたように垂れ下がる手。



翔は口を手で覆い隠しながら、スタスタと歩き始める。




「…………翔?」




呼びかけたけれど、声が小さかったせいか振り向かない。



翔………



なんか、変。

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