無口な彼の妬かせ方
「………へっ?」
いきなりの事に、私の脳内はパニック状態である。
顔は、自分でも分かるぐらいに熱く赤い。
だ、抱き締められてる…?
ギュッと身体が密着するほどの本格的なものではないが、
私にとっては、これぐらいで抱き締められてると判断してしまう。
「しょ、翔?」
顔をあげようとしても、翔の手が邪魔であげることができない。
いきなり……なに?
こんなことされるの、初めてなんですけど……
「……………」
何も言わない翔は、
何事もなかったかのように、すぐパッと離れた。
ふと私の顔を見ては、早瀬くんの方に目線を戻して交互に見ている。
な、なんだったの……?
カァーっと顔がまた、一段と赤くなっていく。
最後にフッと鼻で笑うと、私の肩を二回程軽く叩いて、
そのまま、翔は無言で立ち去ってしまった。