無口な彼の妬かせ方
「黒崎……あいつ、妬いてたな」
「えっ?」
翔の後ろ姿を眺めながら、早瀬くんはそう言った。
妬いてた?
………翔が?
キョトンとする私に対して、途轍もなく呆れた顔をする。
「佐倉………」
そう呼ばれたのと同時に、早瀬くんは溜め息を吐き出していた。
「俺、見せつけられたんだけど」
目を細め、苦笑いで私をジッと見る早瀬くん。
「見せつけられた?」
そう聞き返す私に、
「あーもう!」と。いきなり叫んだ彼は、髪の毛をワシャワシャと乱れさす。
「……お前、鈍感過ぎる」
「えっ?」
小さな声で言ったのか、全く聞こえなくて目をパチクリさせた。
翔が……妬いてた……?
ドキドキと心臓が高鳴り始めて、ノートを持つ手に力を込める。
もしかして………
私が早瀬くんといたことに対して、嫉妬したからあんな事をしたの?
「っ……翔……」
嬉しさのあまりに、私はまた翔のいた方に目線を向ける。
だけど、もうそこには翔の姿がなくて、
ただただ、私の心臓がドキドキとうるさく鳴り続いていた。