無口な彼の妬かせ方

「うっ……うぅっ…」




ゴシゴシと目を擦って、涙を拭う。



拭っても、拭っても。
涙が出るのは止まらない。



我慢しようとすれば、余計に涙が出る。



何泣いてんの……私。



情けない。
こんな事で泣くなんてさ……



早く、泣き止め。




「……………」




黙ったまま私を見つめる翔は、少し困った様子。



手を伸ばしては、また引っ込めてを繰り返していた。



嗚呼……困らせてる。



頭の中では、それを分かっているのに。



涙は一向に止まらない。




「…………なぁ。」


「………っ…え？」




涙を拭っていた片方の手を、パシッと掴まれる。



優しく、緩く。掴まれたそれ。




「ちょっと、来て」


「っ！」




翔がリードするように、私を引っ張っていく。



何処に向かっているのかは分からない。



だけど。



翔の言うそれに従って、後ろ姿を眺めながらついて行ったんだ。