無口な彼の妬かせ方
「さっきの子……ってさ」
キュッと軽い力で服の裾を握る。
下唇を噛み締めて、引っ張り出すかのように言葉を発した。
「翔に、クッキーあげてた子……だよね?」
「!」
それに対し、一瞬驚いた表情を見せた翔。
それを私は見逃さなくて、
ああ、そうなんだ。って理解出来た。
「……そっか」
聞こえたか分からないぐらいの小さな声で呟き、顔を俯かせる。
見間違いじゃなかった。
やっぱり、あの子だったんだ。
さぁーっと指先が冷たく冷えていくのが分かる。
今の私、たぶん真っ青だ。
「……なんで知ってんの」
上からそう声が聞こえて、ゆっくりと顔をあげた。
「………たまたま、みかけたの」
ほんと、偶然だった。