無口な彼の妬かせ方
「………え?」
ポカンっと、口が大きく開く。
翔に対してじゃない……?
そう言っていた彼は真剣そのものだった為、嘘とは考えにくい。
「頼まれたんだよ、あのクッキーも告白も。俺の友達に伝えといてくれって」
私の手の甲に置かれた手が、ゆっくりと離れた。
「た、頼まれた……?」
「そ。"好きって伝えといて"ってさ」
「本人に言えばいいものを、何故か俺に頼んできたんだよ。」っと苦笑しながら言っていた。
じゃあ、あれは……
頼まれていた時だったのか。
私の見たあの場面は、翔に頼んでいたところだったんだ。
そう納得すれば、ホッと一安心している自分がいる。
「そ……なんだ…」
一安心?
違う、それどころじゃない。
一安心どころか、身体中の力が抜けていくぐらいにホッとした。
強張った身体が、ダラリと崩れて。
涙腺が緩んできたのか、視界がボヤけて見える。
グッと堪えてみれば、ポロッと一滴だけ目から流れ出た。