無口な彼の妬かせ方
キョトンとさせて、翔を見上げる私に。
ウッと動揺をみせた翔。
ポケットに突っ込んでいた手で、口元を覆い隠している。
少し強い風がふいて、翔の髪の毛がフワリと舞ったその瞬間。
「………っえ?」
ボソリ、と。
翔は何かを言っていた。
風によって揺れた葉っぱの音が大きくて、何も聞こえなかった。
「ゴメン、なんて?」
そう聞き返してみれば、睨むような目つきで見られる。
いや、ほんと聞こえなかったんだってば。
けれど。翔は「もう言わない」っと言いたげな表情を浮かべてた。
「………あの、」
"翔?"っと呼ぼうとした時に、翔は私の手を掴んで引っ張った。
立ち上がらせる為か、結構強い力で私を引っ張りあげる。
なに、え?
すんなりと立ち上がった私に、翔は手を握り直して。
「そろそろ、帰るぞ」
スタスタと私を連れて、公園の出口の方に歩き始める。