無口な彼の妬かせ方
その後、私たちはずっと無言状態が続いて。
気付けば、もう家についていた。
「あの……ありがとう」
「ん。じゃあな」
ここまでおくってくれた翔にお礼を言えば、
無表情だけれど手を振り返してくれる。
あっ、そうだ……忘れるところだった。
ふと、思い出した首元に巻かれたコレ。
お礼、言ってないや。
私は、背を向けて再び歩き始めた翔に向かって。
スゥッと大量に息を吸い込み、
「翔っ…!マフラーありがとう」
その後ろ姿を見つめながら、私は大きな声でそう言った。
その声に反応したかのように、ゆっくりと振り向いた彼。
少し照れ臭そうで、頭を軽く掻く姿が目に入る。
「それ、クッキーのお礼だから」
っと。そんな返答が返ってきたのと同時に、翔がニコリと笑ったのが見えた。
「……クッキー?」
「美味かったよ、ありがとう」
そして、また。
翔は私に背を向けた。
右手を上に掲げて、ヒラヒラと動かしている。