無口な彼の妬かせ方
「………え?」
"美味しかった"
それって、どういう意味?
翔の言うそれが、よく分からなくて首を傾げた。
あのクッキー、翔は食べていないはず。
だって受け取っていないんだから。
なのに、美味しかったって……
ボウッとそんなことをずっと考えていれば、
ハッとあることに気付いた。
「まさかっ……!」
ガチャリとドアを開けて、私はすぐさま部屋に向かう。
階段を乱暴にドタドタと駆け上がり、バンッと部屋のドアを開けた。
はぁっはぁっと息が荒れる中、私は一つの棚に目を向ける。
ゆっくり、ゆっくりと。
徐々に目線を上にあげていって、棚の一番上をみてみれば。
「………ない。」
そこに置いていたはずの、粉々になったクッキーがなくなっていた。
もしかして、私が熱を出した時に……?
そう思いながら、私はクッキーを置いてあった場所にそっと指を触れさせたんだ。