照れ屋な不良くん
私達は一旦エプロンを脱いで、調理は沙由と神茂に任せる。
まあ、あの二人なら大丈夫なはず。沙由は不良とか言われている神茂に特に興味ないみたいだし。
「家庭科準備室に行けばいいんだっけ?」
クツを履く私の隣で、一足先に履き終えた蒼井くんが左右に目を向ける。
「準備室は上だよ」
「隣じゃないんだ?」
「普通は家庭科室の隣にあるはずなんだけどね」
履き終えた私もその場から立ち上がり、ふふっと笑う。
「まず家庭科室の中にあるべきだよな、皿とかさ」
けれど彼は苦笑いを浮かべ、その言葉に「確かに」と同意する私。
言い始めたら止まらない学校の不満。
そんな会話が弾んで、気がつけば二階の家庭科準備室に着いていた。
ガラリ、と古びたドアを開けた蒼井くんは中を見て驚いた表情を見せる。
「うっわ、何この皿の量」
蒼井くんが驚くのも無理はない。
食器棚が壁一面に敷き詰められていて、それでも入りきらないお皿は食器棚の上へとホコリまみれで置かれている。
「案外俺、ここ入るの始めて」と、周りを眺める蒼井くんが部屋の電気をつけるとパッと明るくなった。