照れ屋な不良くん






「神茂こそ、何しに来たの」




チラリ、と彼は蒼井くんに目線を向ける。




「蒼井ってやつ呼びに来た」

「え?俺?」




突然の事にキョトン顔の蒼井くん。




「なんか試食ばっかしてる女が呼んでる」

「試食ばっかしてる女…?」




誰だ?と目線を送られても…


沙由しかいないでしょ。



またあの子食べてばっかいるんだな、と神茂のそれで気がついた。




「沙由だよ。荒木沙由」




小声でそう伝えれば、蒼井くんは「ああ!」と声をあげ、思い出したらしい。




「そろそろ俺の出番か!悪いな神崎ちょっと行ってくるわ!」

「うん、いってらっしゃい」




急ぎ足でこの不気味な部屋から出ようとした蒼井くんは


扉の前に立つ神茂の肩を軽く叩く。




「ありがとな!呼びに来てくれて」




フレンドリーなところが特徴的な蒼井くん。



不良だろうが、なんだろうが、誰とでも気軽に話しかけるこの人に惚れる人も数知れない。



私も案外好き。



「(恋愛感情ではないけど。)」




ただの憧れ?みたいな。

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