照れ屋な不良くん






「パンばっかじゃ飽きるでしょ…」





「ん、」と、また少し近い距離へソレを持っていく。



……が。




「………、…いらね。」




神茂はキョトンとした顔を見せたあと、プイッと顔を背けた。




…………は?


思ってもみなかったことが起こった。




私の想像では、神茂は何も言わずにパクりとその卵焼きを食べて




「………うまい」




ニヘラと照れくさそうに笑みを浮かべるのだと、想像していたのに。




……まあ、そうだ。

勝手に想像していただけだ。


私が勝手にそうなることを望んでいただけ。



神茂は、私のことが好きだから、
こーゆーの喜んでくれると思ってただけだ。




「あ…そう……」

「………………」




行き場をなくした卵焼き。


顔を背けてムシャムシャとパンを頬張る神茂。


周りから感じる視線。





「こっわー…」

「神崎さん固まってんじゃん」

「あの2人付き合ってんの?」

「えー。それはないでしょ」





私達のことをコソコソと話すクラスメイト。





「全然つり合ってないし」




その言葉が聞こえた瞬間、
卵焼きを持つ手に力がこもった。

< 69 / 76 >

この作品をシェア

pagetop