照れ屋な不良くん
「パンばっかじゃ飽きるでしょ…」
「ん、」と、また少し近い距離へソレを持っていく。
……が。
「………、…いらね。」
神茂はキョトンとした顔を見せたあと、プイッと顔を背けた。
…………は?
思ってもみなかったことが起こった。
私の想像では、神茂は何も言わずにパクりとその卵焼きを食べて
「………うまい」
ニヘラと照れくさそうに笑みを浮かべるのだと、想像していたのに。
……まあ、そうだ。
勝手に想像していただけだ。
私が勝手にそうなることを望んでいただけ。
神茂は、私のことが好きだから、
こーゆーの喜んでくれると思ってただけだ。
「あ…そう……」
「………………」
行き場をなくした卵焼き。
顔を背けてムシャムシャとパンを頬張る神茂。
周りから感じる視線。
「こっわー…」
「神崎さん固まってんじゃん」
「あの2人付き合ってんの?」
「えー。それはないでしょ」
私達のことをコソコソと話すクラスメイト。
「全然つり合ってないし」
その言葉が聞こえた瞬間、
卵焼きを持つ手に力がこもった。