照れ屋な不良くん
ザワッ…と周りがざわめき始める。
そりゃね、こんなふっつうな女子に不良が話しかけたりしたら、何事だ!ってなるわ。
「……なに?」
ジトーっと見下される私。
隣に座る沙由は今だに不思議と冷静にご飯を食べ進めている。興味無いってか。
ザワザワと騒がしい教室内。周りからの目線が嫌でも感じる。
「(ほんと、なに?)」
目を細め、間近の不良を見上げながら机の上にオレンジ色の巾着に入った弁当を置く。と。
ギロリと鋭い目線が一気に私の弁当の方へと向かれ、
人差し指に絆創膏が巻かれた大きな手が、勢いよくオレンジ色の巾着を鷲掴みしたのだ。
「は?」と呆気にとられるのもつかの間。
「おい。屋上行くぞ」
この言葉が、本当にわけがわからなかった。
「…………」
「…………」
なんだ?この気まずさ。
いつもの弁当が全く味がしない。
突然のお誘いと、半ば強引に屋上へと連れて来られた結果、この沈黙の嵐。
沈黙が嫌ってわけじゃない。正直言えば沈黙って案外好きな方だ。
だけどこの沈黙はさすがにキツイ。