照れ屋な不良くん






「神茂」





背けていた顔をこちらに向けた、のと同時に行き場をなくした卵焼きを神茂の口へと突っ込めば「んっ!?」と驚いた声を出す。




「パンばかりじゃ栄養足りないでしょ。ほら、これも食べて。」

「ッ!ちょっ、神崎サ」

「あと私お腹いっぱいだから残りあげる。」





卵焼き以外にも弁当おかずを何度か神茂の口元に詰め込んだあと、弁当箱ごと神茂の目の前に置いてやった。





「喉乾いたし飲み物買ってくる」





唖然とする神茂とクラスメイト達。



立ち上がってスタスタと教室を出て行けば、少しして教室内がざわつき始めていた。




もちろんそのざわつきは注目の的であった私たちのことについて。


けれど私はそのざわつきにも聞く耳を立てないまま、胸を張って堂々と歩いた。





そうだよ。

つり合ってないに決まってんじゃん。


私は至って普通な女子であって、
目の前でパンを頬張るコイツは不良。


そんな2人が一緒にご飯を食べてる。


周りからすれば至って普通な女子が不良に絡まれてる絵図なのだろう。きっとそうに違いない。



そう思われてしまうのは、私達が悪い訳ではなく、クラスメイトが何も知らないからだ。


不良だと言って恐れ無視し、関わることすらしないクラスメイトのせい。



神茂は見た目があれでも笑顔はとても無邪気で可愛いだとか、見た目に反してすごく照れ屋だとか。



神茂のことを、みんながよく知らないから。






そして、何気に神茂も悪い。





「ちょっと待てって!」





そうやって眉根を寄せて鋭い目つきをするからクラスメイトも怖がるのよ。

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