照れ屋な不良くん
「(たぶん昨日の事だと思うけど)」
昨日の夕方に学校で起こった
不良(神茂)との不可解なキス。
でもあれはただの事故でしょう?
時間が経つにつれて、私の考えは徐々に事故だったという風に収められた。
あのキスには、とくに意味は無い。
ということだ。
「昨日の事でしょ、私を呼んだの」
弁当の中に入っていた卵焼きを二つに切って、口へと運ぶ。
あ、今こっち見てる。
横目で神茂を確認すれば、その言葉に反応したらしい神茂が、パンを頬張りながら目線を私に向けていた。
やっぱりね。
「いいよ、気にしなくて。あれはただの事故か何か。あの時ちょうど薄暗かったし、神茂何かにつまずいたんじゃない?」
サラリと発したそれ。何故か今、冷静でいれている自分が凄いと思う。
再び残りの卵焼きを口に運び、弁当を見つめた。
あ、タコさんウィンナー入ってる。
なんて子供っぽいけど可愛らしいその形が案外好きな私。
それだけでテンションが上がってしまう私は、まだ子供なのだろうか。
「(……、…?)」
急に、暗く…?
箸で持ちにくいそれを、やっと掴めて持ち上げた。
だがその直後に、フッ。と視界が薄暗くなる。
それは何かの影のせいで起こる現象。