私これでも一応聖女ですが、落ちこぼれなせいで国外追放寸前です!
震える身体をどうにか動かそうと下唇をきつく噛み締めながら、後ろにジリジリと下がる。
足場の悪いこの場所で転んだら、一気に間合いを詰められるのは見え見えだ。
いくらおっちょこちょいの鈍臭い人間だと自覚していても、この場においてそんなヘマは絶対にしたくない。
下がりながら少年を抱きかかえる手をなんとか自由に使えるように工夫して、ふうと一つ息を吐いた。
私だって転移魔法は使える身……でも今の魔力量じゃとてもじゃないけど無理。
体内の魔力は底を着いてはいるけれど、多少の痛みを我慢すれば防御のための光の盾くらいは辛うじて作れる。
脆いことは確かだけど、光の盾が壊れた反動で発光させれば飛竜が眩しさで目を閉じた一瞬の隙を着く、もうこれしかない。
ぐっと片手に血液に流れる微量な魔力を手のひらに集め、魔法陣を作り出す。
それを見逃さなかった飛竜は目を大きく見開いて、私達に向かって一直線に突進してくる。
予想とは遥かに違う飛竜の速さに拍子抜けしそうになるのをぐっと堪えて、私はありったけの魔力を使った盾でぶつかって来る飛竜を弾いた。
「くっ……!」
計算通り弾け飛んだ光の礫が眩く発光して、飛竜が反射的に瞼を閉じた。