私これでも一応聖女ですが、落ちこぼれなせいで国外追放寸前です!


「必死の抵抗だった。動くことすらも出来なかった足を体を動かして、泣きながら剣士に歯向かおうとした。そんな僕を見て、剣士は僕に剣を向けることを止めて……僕に手を差し伸ばしてきてこう言ったんだ……『生きたいか』って。そのために、生きるために僕はここまで逃げてきたんだと叫んで、その手を我武者羅に取った。剣士は少し驚いた表情をしながらも、優しく僕の頭を撫でてくれた。敵だと認識していた相手の手が凄く温かくて、今でもあの時の温もりは忘れない」


「その、剣士って……」


聞いた話からして答えは何となく分かってはいるものの、フェイムの口から答えを聞きたくて思わず呟いた。


「リゼさんが思い浮かべてる人で正解だよ。ジルの父、リグマド。そして僕は――」


なんの迷いもなくフェイムはその言葉を口にした。


「純血のエルフの血が流れた言わば魔族。人間とは異なる血が流れる種族なんだ」


「エルフ……」


驚きを感じつつも素直に事実を受け入れる自分に、それでいいと思った。


目の前にいるのが魔族だとして、怯える必要はどこにもないんだから。


「そう。魔法で人間の姿に変幻してるだけで、この魔法を解けば……」


一つ目を伏せるとゼノと同じように、エルフ特有の尖った耳が髪の間から覗いた。


「隠しててごめん。でもリグマドに助けられたあの時から、エルフということを隠して人間として生きていこうって決めたんだ」


「ジルには言ってないんだよね?」


「うん。リグマドは僕を一人の人間として育ててくれたから、僕も言うことはなかったんだ。それに、ジルは魔族を嫌ってるっていうのもあるからさ……それが怖くて言えてない」


国を脅かす脅威にも成りかねない存在を、ジルは騎士として見過ごすわけにはいかないだろう。


でも……ずっと一緒にいた家族みたいな存在のフェイムに剣を向けるとは思わないんだけどな。





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