私これでも一応聖女ですが、落ちこぼれなせいで国外追放寸前です!
そこにいたのは――紛れもなくジルだった。
窓のガラス越しに目が合ったと思えば、ジルは必死に手招いて声までは聞こえないが口の動きから『来い』と言っているのが分かる。
慌てて寝巻きの上に羽織るカーディガンを手に取って、静まった部屋を騒がしくさせないようにすっと宿から抜け出した。
夜の少しだけ冷たい空気を感じながら、宿を出て木の影に隠れるジルを見つける。
部屋からはよく見えなかったけれど、少しだけ余所行きの格好をしていて大人びて見える。
呼び止めようとしようとするけれど、それよりも先に彼が私の手を引いて力強く抱きしめてきた。