私これでも一応聖女ですが、落ちこぼれなせいで国外追放寸前です!
各々考えることがあるのか、道中は誰一人として口を開くことはなくて、今までの旅で一番静かだ。
本来だったらこの道を歩く私は、国外追放を免れたのだと嬉しい気持ちでクリスタルを握りしめていたはずなのに。
不安ばかりが募っていって元に戻ったクリスタルを握りしめるだけで、胸が痛い。
誰かが私のクリスタルの力を使って最悪を生み出そうとしているなんて……絶対に許さない。
こうしている間にどこかの結界が破られて、魔族が村や街に押し寄せて行っていたら――考えただけでも恐ろしい。
加護の力は私が持っているから、その人は誰かを癒すことすらせずに流れる血を眺めるだけなんだろう。
止めなきゃ、絶対に。国へ帰らなきゃ。
「リゼ」
考えに耽っていた私にジルが声を掛けてきて、数秒ぼうっとした後、意識をジルに向けた。