私これでも一応聖女ですが、落ちこぼれなせいで国外追放寸前です!
「はああっ!」
知らない男の人の声だ、ギルドにいる冒険者達の中でも聞いたことの無い人の声。
人の声と頭が判断した途端、そこからはもう無意識でその声のする方目掛けて走っていた。
土煙を扇いで親ドラゴンが暴れる方へと足を急がせると、少し拓けた場所に彼はいた。
巨大なドラゴンに引け目を取らずに、真っ直ぐに伸びた剣を構えて立ち向かうその姿に思わず目を奪われた。
歳は二十歳過ぎといった所だろうか、私よりも頭一つ分くらい高い背丈に、冒険者用の動きやすい暗めの服装だけだというのに彼を引き立たせている。
その服を纏った体はしっかりと筋肉がついて隆々としているのにも関わらず、真っ直ぐ一本の線が通っているかのように伸びた姿勢には美しさがあった。
深い海の底のようなアイアンブルーの短めに切られた髪が、ドラゴンが巻き起こす風と共に靡く。
全てを見透かしそうな切れ長のブルーダイアモンドのような輝く瞳に、すっきりとした高い鼻梁、緊張感の中に少し楽しみを見出していそうな口角は少し上がっている。
こんな綺麗な人、世の中に本当にいたんだ……。