私これでも一応聖女ですが、落ちこぼれなせいで国外追放寸前です!
「ジルゲイル様!!」
数人の街の兵士達が私達の姿を見つけた途端、慌てて走ってくるただならぬ空気にジルがそっと手を離した。
「陛下より伝令です!王都にっ……!王都に上級魔族が出現したと!」
「王都にだと……?!」
衝撃的な事実にいつもなら冷静に対応するはずのジルが、取り乱すように声を荒らげた。
どうやら……私の偽物が大きく動き出したらしい。
「急いで王都へ戻るようにとの事です。足は用意してあります故、我々と共に来てください!」
「ああ。分かった」
一つ返事を返したジルは先を急ぐ兵士に着いて行こうとする足を、ほんの少しだけ緩めた。
フェイムに先に行っていくようにだけ伝えると、二人だけになってしまった。
こんな時にでさえ、二人きりになるとドキドキしてしまうのだから本当に恋って面倒だ。
「リゼ。あんな事言ってしまったが、俺は真っ直ぐに貫こうとする意思があったことは、ちゃんと知っていたからな」
「そりゃあだって……お互い守るものがあるから、でしょ」
「最初はこんな契約破棄して、さっさと自分の任務をこなせば良かったと思っていた」
「嫌々やってたものね」
「ただ、ここに来るまでにあんたは大きく変わった」
そう言われて真っ直ぐに見つめられると、胸が苦しくて彼に触れたくなってしまう。