私これでも一応聖女ですが、落ちこぼれなせいで国外追放寸前です!
好きになってしまった人に、その事実をぶつけられるのってこんなにも苦しいんだ。
「……分かった」
それ以外何も言えなかった。
違うとも否定することも出来なくて、ジルが好きだとも言えなかった。
最後に頭を一つ撫でられた感触だけが、その温もりが残酷にも残ってしまってただ無理やり作った笑顔で、ジルと別れることしか出来なかった。
じゃあまたどこかで、と立ち去っていくジルの後ろ姿を追いかけることは出来なくて、下唇を噛み締めた。
ただ理性が保てていたのは、国に帰って私がやるべきことがあるという聖女としての務めがあったから。
それがなかったらきっと――その場にしゃがみこんで失恋という苦い味に心を食われていたのだろう。
街の中に消えていった二人に、私は逆方向のアンゼリオへ帰るための道を進むしかなかった。