私これでも一応聖女ですが、落ちこぼれなせいで国外追放寸前です!
阻止、そっか……偽物は私をここから動かないように裏で糸を引いているんだ。
そのデマは誰が流しているのか、それを掴めればもしかしたら混乱が落ち着いて、ギルドの人に話を聞いてもらえるかもしれない。
街の人達から少しずつ情報を集めて手がかりを得よう、そう思って回れ右をして歩み始めた私の前に現れた一人の男性。
サラリと揺れる、珍しい黒髪に狼の耳を持つ彼は記憶に新しい。
「トウハさん?」
確かルリナさんの従者兼子守り役と言っても、あながち間違っていないであろう彼が、どうしてこんな所にいるのか。
首を傾げていると律儀に頭を下げて真剣な眼差しで見つめてくると、失礼しますと一言だけ言ってから私の手を掴んだ。
「ちょ!どうしたんですか?!」
「少し人に聞かれたくはない内容なので、場所を変えます」
そう言って軽々しく私を抱き上げるや否や、人とは異なる血が流れているのを見せつけてくるように、驚異の脚力で地面を蹴ると民家の屋根を使って移動を始めた。