私これでも一応聖女ですが、落ちこぼれなせいで国外追放寸前です!
その光景を目の当たりにしたメイの怒りが鎮まった。
ボソリと何かを呟いたかと思えば、先程と同じ人物とは思えない程、能力を向上させジルを押し倒し、目にも止まらぬ速さで私の方へと一直線にやってくる。
力を使い切った私には光の盾ですら作り出すことは出来ない。
突然のことに反応が出来ずにいるフェイムが咄嗟に魔法を発動させるけれど、メイの短剣は私のすぐ目の前に迫っていた。
遠くにいるはずでもないのにジルの叫び声が、すごく遠くから聞こえてくる。
……死ぬ間際って、こんなにも静かなんだ。
皆の動く音も風の音すらも聞こえなくなるのに、ドクンドクン……と響く心音だけが、やけにハッキリと聞こえてきて、まだ生きているということを伝えてくる。
陰謀を防ぎきったんだから、もう私の役目は終わり、かな。
落ちこぼれにしては、上出来だったんじゃない?
『愚か者が』
「――え……」
周りの音が何もかも聞こえなくなったというのに、その声だけはしっかりと私の耳に響いた。