私これでも一応聖女ですが、落ちこぼれなせいで国外追放寸前です!



まるで魔法陣が大口を開けるようにして、彼女を飲み込むとゆっくりと魔法陣が動き出す。


時計の歯車が噛み合うかのように、一つ一つ細やかな魔法が発動していく。


そして遂に文字を浮かび上がらせた魔法陣は発動を完成させ、ギュンと素早く回ったかと思えば……次の瞬間には何事もなかったかのような青空が広がった。



「終わった……」



あれだけ恐怖に支配されていたというのに、やけに静かだ。


混乱していた王都の人達は、無事だろうか。


色々と確認したいことがあるっていうのに、頭が働いてくれない。


辺りを見渡せば瓦礫の山となった玉座の間が、疲れましたと泣くようにパラパラと徐々に崩れ始める。


休む暇もなくフェイムの空間移動魔法に、クリフ王子と黒ローブの男達を乗せ、完全に崩れる前に何とか中庭へと脱出する。


これは王様も城の建て直しを検討しなきゃね。


心地いい風に髪を踊らせていると、ジルが隣にやって来た。



「よくやったな、リゼ」



よろける身体を支えてくれたジルがそっと優しく包んでくれて、その優しさに甘えるように身体の体重を預けた。



「落ちこぼれでも……やる時はやるんだってこと、証明できた?」


「俺たちを守ってくれたこと、感謝してもしきれない程にな」



ああ……ちゃんと皆のことを守れた。


その喜びが全身に痺れるようにして伝わっていく。




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