私これでも一応聖女ですが、落ちこぼれなせいで国外追放寸前です!
そんな私の言葉に聞く耳を持たずに、下ろす気配のないジルに飽き飽きしていると、どこからか馬の走る足音が聞こえてきた。
ふと前を見れば大きく広がる街が小さくだが姿を表していた。
街へと続く道は綺麗に舗装されていて、ぬかるんだ地面はとっくに姿を消しているのに気づき、今度こそジルに強く下ろして欲しいと懇願する。
何故か渋々といったご様子のジルが私をやっとこさ地面に下ろしてくれた時、先程聞こえた馬の足音が近づいてくるとそこには一台の立派な馬車が横を通り抜けて行った。
暫くして馬車が少し先で止まったかと思えば、馬車の窓から一人の令嬢が顔を出てきた。
「ジルゲイル様!!」
やや興奮気味の声でジルの名前を呼ぶと、馬車の扉を開けて令嬢が無理に飛び出して、艶のある短めの金色の髪を風に靡かせながら、可愛らしい顔を輝かせてこちらへと駆け寄ってくる。
御者も突然のことに驚いたのか、慌てて令嬢の事を呼び止めるが彼女には声はどうやら届いていないようだ。
「お久しぶりです!一年ぶりでしょうか。こうやってジルゲイル様自ら会いに来て下さるなんて、すごく嬉しく思います!」
「ルリナ様、お久しぶりです」
ルリナと呼ばれた令嬢は、私の存在自体を無いものとして認識してるのか、ジルの隣に立つ私を押しのけてジルの腕に抱きつくように歩み寄った。
私とそう歳は変わらないはずなのに、育つところはちゃんと育っていて、意図的にジルの腕に押し付けているように見え、申し訳ないけどはしたない女性だと思ってしまった。
私の目にはそう写ってはいるもののジルも相変わらずの女性への対応をして見せていて、どうやらこの二人は顔見知りらしい。
ただあの女性に対して笑みを浮かべるジルなのに、今日はいつにも増してトゲトゲしさをモロだしだ。
私はルリナさんに睨みつけられる前に数歩後ろへと後退り、フェイムの後ろに隠れるように身を潜める。
そんなフェイムも私を庇うようにしながら、一緒に後ろへと下がった。