私これでも一応聖女ですが、落ちこぼれなせいで国外追放寸前です!
ジルを連れて歩き出したルリナさんを少し遠くからフェイムと共に眺めていると、ジルがふと私達を手招いた。
「ジルゲイル様、あの御二方は?」
「僕の連れのフェイムと、今回の依頼主のリゼです」
「依頼?!ジルゲイル様、騎士団長の貴方様があんな平民の娘の依頼をお受けしたのですか?!」
あんな平民の娘って、一応私これでも聖女っていう立ち位置にいる貴方よりも身分はあるんだけど。
無性にムカムカするせいで公に晒したくないその事実を口に出しそうになる寸前、ジルがやんわりとルリナさんを窘める。
「平民でも困っている人に手を伸ばすのが、騎士としての務めですので」
笑みのない表情でジルは顔を近づけるルリナさんの肩をそっと離すと、掴まれていた腕を振りほどいた。
「そんな、私……ジルゲイル様にご依頼をしたくてずっと待っていたのですよ?是非、私の護衛の任務をしてくださいな。お金ならその娘よりもたくさんお出ししますわ。ね?」
「今は引き受けている任務に遂行中ですので、すみませんがお引き受けすることは出来ません」
「つれませんわね。では、今夜晩餐会を開く予定があるので是非参加してくださいな!」
再びジルとの距離を詰めようと動き出したルリナさんだったが、燕尾服を着た狼のような耳を持つ男性が彼女を止めに入った。