私これでも一応聖女ですが、落ちこぼれなせいで国外追放寸前です!



珍しい黒髪のその男性に、私は思わず綺麗だと思った。


「お嬢様。早く屋敷に戻らねば晩餐会の支度が間に合いません」


「トウハ、獣人の混血の貴方が口を挟んでいいものではないのよ!立場を弁えなさい!すみません、ジルゲイル様。この獣人ったら気が利かないもので……ご気分を害されてしまいました?」


そんな、獣人だからという理由で相手を差別していいものじゃない。


確かに見た目は人とは違う、でも心を持っていることは同じだしちょっとした身体能力の差はあっても、差別するものではないのに。


ジルにそれ以上近づかないで、トウハさんを侮辱しないで。


そんな怒りがふつふつと湧き上がるばかり。


ルリナさんは凄い勢いで今にも使いのトウハさんに噛みつきそうな様子だったが、ジルに甘える態度だけ変える気がないのが気持ちが悪かった。





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