私これでも一応聖女ですが、落ちこぼれなせいで国外追放寸前です!



まだ太陽が高い位置にあるものの、今の時間から大森林に入ったら帰ってくるのは夜が更けた時間になることを見越して、明日大森林へと向かう予定を組み、今日の残りの時間は自由時間となった。


「俺は役所の方で王都に諸々と報告作業をしてくる。夜には戻るだろうからそれまで好きに過ごすといい」


「僕も少し立ち寄りたい所があるから外に出るよ。リゼさんものんびり寛いでいて」


そう言って颯爽と行動に移した二人を見送り宿屋に取り残された私は、することも特に思いつかなかったこともあり迷子にならない程度に街の散策をすることにした。


「久々の息抜きって感じがするわね」


そよ風が心地よく流れる中、うーんと一つ背伸びをしながら体の緊張を解しながら歩く。


知らない場所の知らない空気……幼い頃に旅をしていたあの感覚に似ていて少しだけ胸が踊る。


街の大きな通りへと続く石橋を渡り、見たことの無い馬のような鹿のような何とも言えない生き物が馬車を引くのを横目にしながら、真っ直ぐ歩いていくと商店街へとたどり着いた。


食品から日用雑貨まで何でも揃いそうなこの場所には、相変わらず人が多く足を運んでいる。


楽しそうに遊ぶ子供たちの間を通らせてもらって、更に奥に進むと商店街とはまた違った落ち着いた建物が並ぶ場所に出る。


どうやらここは少しお値段が高めの店が並ぶ場所らしく、行き交う人もどことなく品が高い。


女性向けの地域独特の刺繍が施された服やアクセサリーが並べられた店に自然と笑顔を浮かばせていると、ふと遠くにジルの歩く姿が見えた。


彼の後ろ姿を眺めていると、道ですれ違う女性に声を掛けられ愛想のいい笑顔で返事を返しながら、白を基調とした煉瓦造りの大きな建物の中に入っていってしまった。




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