大人になる方法

出会い

いつも通りスニーカーを履いた先生が、女の子に続いて教室に入ってきた。


紫陽花色に疼くリボンで束ねた髪が揺れる。


白いワンピースとハイヒールをナチュラルに着こなす女の子は、先生と一緒に黒板の前に立った。


「転学してきた對馬 心(つしま こころ)です。よろしくお願いします。」


私と凛は、しばらく見惚れていた。

気付けば私たちだけではなく
教室にいた多くの人が見惚れていた。


心ちゃんは大人びていて、同い年には見えなかった。


なんだか、学生とは思えない色気がある。


黒くて長い髪、小さめの非対称な目、
小柄で太すぎない肉感的な体。

王道ではない、流行りでもない。

芸能人のように
誰が見ても美人と言われるような容姿でもない。

けれど、間違いなく彼女だけの魅力がある。


隣の席に座り、私と同じように彼女に見惚れている凛も、きっと、同じことを思っている。


先生の指示で心ちゃんは私の前の席に座った。


私も、凛も、話しかけることができず
ただひたすらに、
目の前の紫陽花色のリボンを見つめた。

しばらくして、授業も中盤にに差し掛かる頃
凛はついに行動を起こした。


“友達にならない?”


そう書かれたメモを心ちゃんの机に置いたのだ。
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