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……私、ここにいていいのかな。



近くにいるから、2人の会話が嫌でも耳に入る。


とても仲良さそうに喋ってる様子を見て、この場から逃げたくなった。



……いや、逃げちゃおうか。





「………………」





ゆっくり、その場から離れようと足を動かす。



………けれど、




「っ!」




目、合っちゃった…



彼女さんとパチッと目が合うと、
その人は「あっ!」と声をあげて




「この前蒼空が待ち合わせしてた子だ!」




"待ち合わせしてた子"



たぶん食堂で会った時の事を言っているのだろう。


あの時と同じようにニコリと微笑むその顔を見て、やっぱり綺麗な人だなぁ…と見惚れてしまった。




「こんにちは♪」


「あ、こ、こんにちは……」




逃げるにも逃げれなくなっちゃって、その場で立ち止まる私。




「もしかして、この子も一緒の職場の子だったの?」


「あぁ、そうだけど」


「なーんだ!じゃあ紹介していてよ~」




彼女さんが蒼空さんの肩を軽めに叩くと「イテッ」っと小さい声をあげた蒼空さん。



それに対して蒼空さんはやり返そうとはしなくて



(私の時はいつもデコピンとかしてくるくせに…)



彼女さんの事、大切にしているんだろう。


嫌でも気づいてしまう。





「じゃあ、私帰るね」





仕事頑張ってね!っと小さく手を振る彼女さん。
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