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胸がドキドキと鳴ってうるさくて、蒼空さんにも聞こえてるかもしれない。




「ね、寝ぼけてる!絶対寝ぼけてる!!」




蒼空さんがこんな事してくるはずがない!


それとも間違えてお酒でも飲んじゃったとか!?



頭の中で必死に答えを探すけど




「寝ぼけてない」




その言葉が聞こえると同時に


また後頭部にある手によって、再度引き寄せられた。



けれど、


反射的に私の手が蒼空さんの口を覆い隠す。




「わ、たし、そろそろ帰らなきゃ…!!!」




もう一つの手で蒼空さんを押し返して、慌てて荷物を持って逃げるように玄関へと向かう。


今日に限ってスニーカー履いてきちゃった…!!


早くこの場から離れたいのに、靴紐で手間取っていると




「右の棚」


「っ…、……え?」




後ろから声が聞こえて思わず身体がビクッと反応する。


"右の棚"とは…?


言葉の意味が分からなくて振り向くと


ズボンのポケットに手を突っ込み、


壁にもたれかかる蒼空さんがいて


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