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「皆さん、今日もお疲れ様でした。気をつけて帰って下さいね」
事務所のシャッターを下ろすと、仕事は終わりを迎える。
今日も一日中掃除だけで終わってしまった。
お客さんは昨日と一緒で0人。
まあ閑散期だから仕方がないけどね。
人々は依頼に来るよりも先に、年末に向けての家の掃除で忙しいのだろう。
「あーさみぃ……」
私の隣で身体を震わせる蒼空さん。
蒼空さんとは昼休憩以外では会う事がなく、
私はいつも通りに2階で書類整理をしていて、蒼空さんは1階を掃除していたから滅多に会わなかった。
(……昼休憩の時はいつも通り喋っていたけど)
この人、私の気持ち知ってたよね?
そう確認したかったくらい、あれから何の進展もなく、本当にいつも通りに会話をしていた。
「じゃあ、あんた達気をつけてねぇ~!!!」
「はい!心音さんも気をつけて!!」
両手いっぱいにゴミ袋を持った心音さんは、今から用事があるからと、陽葵さんと同じ方向から帰って行ってしまった。
いつもは3人で帰っているのに、こういう時に限って2人っきりで
嬉しいような複雑のような……
「おい、帰るぞ」
「あ、うん」
先に歩いてる蒼空さんを追いかけるようにして、後ろからついていく。
(でも、これってチャンスなんじゃ…?)
気持ちがバレてしまっているなら、
もう伝えるべきだよね。
掃除をしている間にずっと考えていたけれど
もうバレているなら素直に言うべきだと。