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「……………」




それに気づいたのか、


繋いでいた手がスルリと離されて


何も知らない私は「(あ…離されちゃった…)」って残念がっていると




「っ!」




フワリ、と蒼空さんがつけていたマフラーを私の首元に巻きつけた。




「え…いいの?」


「寒いんだろ。つけとけ」




そのマフラーはまだ蒼空さんの温もりが残っていて、温かい。




「へへっ…ありがと…」


(嬉しい…)




そのマフラーから香る蒼空さんの匂い。



この匂い好きだなぁ…



嬉しくて、素直に顔がニヤけてしまう。




「……あったかくなる方法、もう一つあるけど」


「え?なになに?」




そんな私をジッと見る蒼空さんに、目線を向ければ




「っ、!」




チュッ、と触れるだけのキス。


一瞬だけど、唇に触れたそれに私の身体はみるみると熱くなって




「そ、蒼空さん…!?」


「な?あったかくなっただろ?」




ニヤリ、と笑うその顔。

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