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「お前の名前にぴったりだと思って」


「私の名前覚えてたの!?」


「…覚えてるけど?月と姫って書いて"月姫"だろ」




"月姫"っと呼ばれ


蒼空さんから呼ばれた事のないその名前に、
思わず照れてしまう。




「………何照れてんの」


「だ、だって!名前…呼ばれた事なかったから……」




隠すように両頬に手を当てれば


蒼空さんは「ふーん?」っと怪しげな笑みを浮かべた。


あれ…
なんかやばい気がする……




「あ…もう食べ終わったし片付けるね…!」




私はその場から逃げるように、食べ終わったお皿を持ちキッチンへと逃げる。


けれど、キッチンまでの距離なんてたかが知れてるし、お皿をシンクに置いたのと同時に背後には蒼空さんの気配。




「月姫」


「っ、!」




耳元で、私の名前を呼ぶ。




「わ、わざと呼ばないで」


「今まで呼んでなかった分、呼んでやろうと思って」


「い、いらない!嘘だしさっきの!!」


「いいから、とりあえずこっち向けよ」


「っ…」




その言葉に、素直に蒼空さんの方に向いちゃう私もバカだと思う。



たぶん真っ赤な私の顔。



その顔を見て、蒼空さんは満足したかのように笑うから、悔しい……

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