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「はっ、真っ赤」


「(ムカつく……)」




すぐ近くには蒼空さんの顔。




……私からキスをしたら、蒼空さんの照れた顔見れるのかな。



悔しいからやり返したくて、

無我夢中で伸ばした手は蒼空さんの襟の部分を掴む。


グイッと引っ張れば、蒼空さんは一瞬驚いた表情を見せて


触れるか触れないか、そんな距離になった時



ピンポーン…



部屋に響き渡るインターホンの音。


その音で、ピタリと動きが止まる。



(ナイスタイミング……)



蒼空さんと目が合って、我に返った私はパッと襟を掴む手を離す。




「残念でした」




ポンポン、と私の頭を軽く叩くと、蒼空さんはスタスタと玄関の方へと歩いて行ってしまった。



(ド、ドキドキしたぁ……)



ホッ、としたら急に身体の力が抜けてその場に崩れ落ちる。


やり返しだとはいえ、
積極的にキスしようとした自分が恐ろしい……

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