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「お前はもーそこから出てくんな!!!」


「ひどい…ここ押し入れじゃないの…」




リビングに隣接された押し入れの中に入れられて、心音さん…いや、優也さんはそこでちょこんと三角座りをしていた。




(いいのかな…)




あんなところに入れられて、ちょっと可哀想だと思ってしまう。




「あら?誰か携帯鳴ってない?」


「あ、ほんとだ…」




部屋の中で誰かの携帯の着信音が鳴っていて、キョロキョロと周りを見渡す。



(あ、蒼空さんの携帯…)



ちょうど私の近くにあった携帯から鳴っていて、


またしても見るつもりはなかったけど、見えてしまったソレ。



"華"



画面にはその文字。



(ほぼ毎日かかってきてない…?)



昨日の電話だって、たぶん華さんからだもん。




「蒼空さん、鳴ってるよ」




胸がモヤモヤと変な気持ちの中、ソレを取って蒼空さんに渡してあげる。


蒼空さんはその画面を見た瞬間、小さく溜め息を吐いた気がした。




「心音、約束破ったらマジで放り出すからな」


「分かってるわよ…」




そう言い残して、蒼空さんはベランダへ出て行ってしまった。




「………あら、どーしたの?そんな顔して」


「な、なんでもないです…」


「なんでもなくない顔してる」


「あ、優也さん…!そこから出たら怒られますよ!!」


「大丈夫、ちょっとだけ」




押し入れから出てきた優也さんは、私の前に座る。

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