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「あのね、」




蒼空さんが美味しいって言ってたことも湊くんに伝えようとして、


目を合わせようと見上げれば。




「………湊くん?」




ジーっと私を見る目。



湊くんの手が私の頬の近くに伸びてきていたから



ビックリして名前を呼ぶと



ハッ、と我に帰ったみたいで、少し顔を赤らめている。




「す、すいません……」


「ううん、大丈夫。


………なんか顔についてる?」




私の頬を触ろうとしていたから、顔に何かついているんじゃないかと思って。




「あ……、いえ…なんでもないです…」




私に向かって伸びていた手はいつの間にか下がっていて、



「………そう?」




じゃあなんだったんだろう?



ちょっとモヤモヤしてしまう。




「僕ここで曲がるので…」


「あ、そうなんだ!じゃあまた明日ね」




ペコリ、と頭を下げて行ってしまった。




(本当に顔に何もついてないよね?)



気になって、



カバンから鏡を取り出し、確認してみたけれど特に何も無し。




(………何もついてない)




じゃあ、あれは一体……



その時の事を思い出すと、湊くんが私を見ていたときの目に違和感を覚えた。



あの目……蒼空さんもしていた。



なんかこう…ボーッとしてるようで、

何かを考えている時のような。




(確か…キスする前のときに……)




…………キス?




「えっ、」



湊くん、私にキスしようとしてたの?


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