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「あ…もう大丈夫だから………」
そう言うと、湊くんと目が合った。
いつもとは違う表情にドキッしてしまう私。
「……フォーク新しいの持ってきますね」
スルリと手を離されると、
私が落としたフォークを拾い上げて行ってしまった。
(湊くん学校でモテてそうだな……)
平気であんな事が出来る男の人って確実にモテると思う。
男慣れしていない私は思わずドキッとしてしまったし…
「………月姫さん?」
「えっ、あ!ごめんありがとう…」
はい、と渡されたフォークを受け取る。
ダメダメ、ボーッとしてちゃ…
せっかく試作品食べれるんだから、
しっかり味わって感想教えてあげないとーー
「………僕、他人に興味がないんです。」
湊くんから呟くように聞こえたソレ。
思わず動きが止まる。
「相手の気持ちを考えて話すとか、ただめんどくさくて。
人と関わりたくないし、出来ることなら1人で行動したいと思ってました。
けど…親がパン屋を始めるって言うから、手伝わないわけにはいかなくて。
嫌々ながらも手伝うことになったんですけど、
人と関わりたくない僕からしたら、ただただ苦痛で仕方がなかった。
………けれど。
月姫さんと一緒に働いていくうちに
お店を全力で手伝ってくれるところや、
父さんのパンをとても美味しそうに食べてくれるところ。
パンを褒められれば、自分のことのように喜ぶ。
そんな月姫さんと働く事が、今となっては楽しみへと変わっていて……」
「っ……」
真剣な眼差しで見られて、
動揺した私はまたフォークを落としそうになったけれど
パシッと湊くんに再度その手を握られてー