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「………僕、月姫さんのこと気になってます。」




頬を赤く染める湊くんの手は、さっきよりも温かい。




「えっ……」




ドクンッ、と胸が高鳴った。




「……今日で契約期間終わりだと聞きました。

だから……終わる前に伝えておきたくて…」




ギュゥッと私の手を掴む力が強くなった。




「っ……気持ちは嬉しいけど、私………」




彼氏がいる。



そう言おうとしたけれど、

湊くんの手が軽く私の口元を覆い隠す。




「……ただ、気持ちを伝えたかっただけなので…」


「っ………」




タイミングよく、お客さんの来店音が鳴った。




(あ…お客さん……)




スルリと掴まれていた手が開放されると




「………僕行きます」




私よりも先に動いたのは湊くんで、



何事もなかったかのようにスタスタとお客さんの元へと行ってしまった。




(湊くん…そんな風に思ってくれていたんだ…)




ドキドキと胸が鳴り止まない。



たった3日でそんなことありえない、


そう思っていたけれど、私の勘は当たっていたみたいで。




(こういう時ってどうしたらいいんだろう……)




………戸惑う。

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