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「……はい。それではお待ちしています。」

「どーだった!?」




電話を切った蒼空さんに駆け寄る私。




「来るって。」

「ほんとっ!?じゃあ綺麗にしとかないと!」

「あんまり強引に拭くなよ。傷つけたら弁償になるからな」

「分かってるって!!」




指輪を片手に、泥を出来るだけ拭き取る作業に取り掛かれば、




「凄いわ!!月姫ちゃんと蒼空!もう大好きよ!」




その大きな手で私と蒼空さんを引き寄せて抱き締めてきた心音さん。




「わっ…!こ、心音さん!!」

「近寄んなオカマぁあ!!」

「もうチューしちゃう!」



(ヒィ…!!)




徐々に接近してきた唇に身を仰け反らす私だが、危機一髪のところで蒼空さんが心音さんに蹴りをいれてくれた。




「アンタ…強くなったわね……」




床に横たわる心音さんを心配しながらも指輪を丁寧に拭く。




そんな私達を微笑みながら見ているのは陽葵さんで、




「あ、来たようですよ。」




その言葉と共にベルが鳴った。




「俺呼んでくるからお前は指輪を準備してろ」

「もう準備満タン!!」




泥はもう出来る限り拭き取る事は出来た。



(後は西島さんに渡すだけ。)




「どうぞ、こちらです」




上へと案内してきた蒼空さんの後ろには


前と同じ、オドオドしている西島さんの姿が見えた。




見つかった指輪を渡せば




「これです…!!妻の指輪です…!」




一瞬で安心した表情へと変わり、涙を流していた。




「本当にありがとうございました…!!」




そう指輪を手にはめて笑顔で帰っていく西島さん。

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